廃墟が好き

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ふと、「あー私廃墟好きだったわ」と、思い出した。小さいとき祖父母と祖父の生まれ育った村へ行った。実家のそこは廃墟になっていて、草が生い茂り、子どもは危ないから離れて待っているように言われた。

 背丈が140㎝位しかない小さな祖父だったが、 どんどん中へ入り込み、懐かしの我が家へ入っていった。出てきたとき、「白蛇がおったぞ」と、誇らしげだった。有難い神様みたいなものが自分の実家にいたということで、長年空き家にしていたから祖父は白蛇が先祖を祭っていると安心したのかもしれない。 

 その白蛇の館はその後どうなったのか聞くのを忘れていた。昔、西南の役か何かの戦争で逃げ帰った祖先は海を渡ってその家にたどり着いたらしい。なんだか尊い。場所もよく分からないあの廃墟。スマホもデジカメもない時代。思い出の中にしまっておきなさいと言うことか。 

 メジャーな廃墟としては、断然端島(軍艦島)が好きだ。初めはフランスのモン・サン=ミシェルを何気に調べていた。島全体が建物みたい、すごい!と見入っていた。すると、どうも日本にも島全体が建物みたいなのがあるらしいぞと言うことで端島(軍艦島)に出会う事となった。そんな廃墟好きな私だが、軍艦島には行ったことはない。正しく言うならば、行こうとしたが行けなかったのだ。軍艦島へ行くには、長崎から船に乗り行かなければならない。旅行者として訪れたため、その日の軍艦島クルージングの定員がいっぱいで行けなかった。いつかは行ってみたいと思っているが、廃墟好きの名が廃るかもしれないが告白する。本当はタイムトリップして、軍艦島に人々が居住している時代に行ってみたい。廃墟はその入り口だ。私をタイムトリップさせてくれるツールなのだ。その軍艦島に行ったら、私も島の住民として住もうと思っている。独り身として、島の看護婦にでもなって働いてみよう。休みの日には賑やかなまちの方の市場で買い物もしてみたい。島のあちこちを巡って、未来都市のような建物を巡ってみよう。写真も撮っておこう。 

 廃墟を見たら、まず誰が住んでいたのか、いつの時代なのか、なぜここを去って行ったのかを立ち止まって考える。人が住まなくなった家屋はすぐ悪くなる。私の家もいつかそうなるだろうか。未来の廃墟好きさんに見て貰えるかな。その時は天国で答え合わせでもしたいと思う。

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